【コラム】キャリアについて 第五回
「企業は決して安定しているものでなく将来にわたり雇用や給料を保証してくれるものでない」と考えるのは当地のシンガポール人だけではありません。不況による日本での派遣切りが大きく報道された事は記憶に新しいと思いますが、雇用主が業績により雇用調整を行うのは、企業が存続していく上での一つの経営判断であって、かわいそうなどという感情論の問題ではないのです。
働く側の意識としても、正社員は責任がありサービス残業も多いため組織に縛られない方がいいと派遣社員を選択をしたのなら、雇用調整があっても事実を受入れざるを得ないはずです。正社員ではなく派遣社員という雇用形態を選択したのも、「どうせ自分は正社員にはなれないだろう」と自らのキャリアを放棄してしまったキャリア危機の一例かもしれません。「与えられた仕事をたくさん精一杯行って、一生懸命努力すれば、遣り甲斐や給料もついてくる」と信じて皆就職するのですが、金融危機後の経営環境は大変厳しく必ずしもそうとは言えない状況が続いています。
さて、キャリアを組み立て、それを実現するのには4つの局面があると経営学者のゲラマンは説いています。まず1つ目は準備期で、自分の「適性」や「資質」を正しく捉え、そのキャリアが必要とする能力を予め保持し、就職活動に参加するというものです。2つ目は向上期で、下記表に示した4つの点に従い、キャリアの方向付けを強化するというもの。3つ目は高原期で、キャリア選択の機会として、自分からのアプローチ以外の手段(ヘッドハンティング等)を獲得するというもの。この頃がピークであり、いわゆる「売れ時」と言えます。4つ目は、仕上期で、自分のキャリア選択を「成功した」と自己評価するために、仕事を通じての成果・内外からの評価を追及するというもの。
ゲラマンの分類は、キャリアを組み立てていく上で、第一に、明確な「イメージ」を自己形成し、第二に、そのイメージを実現する方向に自分を動機付け、第三に、内外からの評価を参考にしながら、自己検証・評価を行うという3点です。
弊社の40代の登録者の傾向として、20~30代までは比較的同じ職種で長く勤務していらしたのが、40代に入って転職意欲が高まり、自分の「キャリアの仕上げ」を急いでいらっしゃるように見えるという点があります。家も購入し、子供も大きくなり、経済的な満足(給料)より、今後老後までにどのようなキャリアで自らを奮い立たせるのかを模索していらっしゃるようでもあります。一時期の起業ブームで若手の経営者がたくさん生まれてきましたが、これも「人脈の形成」を成し遂げた後に、「俺には人脈がある」と宣言しベンチャー企業を作ったものの、金の切れ目が縁の切れ目のように人々が去って行ったという話からもうかがえるように、必ずしも人脈を形成したからといって成功するものでもないようです。キャリアの仕上げには皆それぞれの考え方がありますが、社内的に留まって社長を目指すのも、独立開業しオーナーになるのも、「キャリアの形成」の一環と言えるのです。
次回はキャリア・アンカーについて述べて行きます。


