【コラム】組織図の作り方 第十回
先日、飲食業Y社のトップの方とお会いしました。シンガポールに進出してそろそろ3年が過ぎようとしていますが、やはり組織上若干の歪が出ているようです。この会社の組織は「事業部別組織」をとっております。(図参照)HR(本部)はサポートに徹し、各事業部(各レストラン)に権限を委譲し各事業でのビジネスの最適性を求めてきました。当初は物珍しさもあり、お客さんが多かったレストランも、やがて競合進出により、お客さんを取られたり、またプロモーションをたくさん打ち出し顧客の獲得に躍起になったり、大変そうです。日本食レストラン事業は好調で現在の2店舗を維持しながら3店舗目を計画中とのことです。出店場所は飲食業にとってはトップシークレットなので教えてはくれませんでしたが、今はその出店準備で大忙しのようです。好調な事業部がある反面、不調、採算の悪い事業部が出てきており、縮小か廃止かを計画中です。その中で、とある有能な社員に「事業部間異動」を打診したところ、激しい抵抗にあい驚いたそうです。抵抗の理由はよく聞いてみると、1.自分の事業に興味があり、他の事業(レストラン)に移ってもできるかどうかわからない。2.勤務地が自宅から若干遠くなること。3.他の事業部に行けば後輩になるので一から始めなければならない。の3点でした。3つの異なったレストランをまとめているトップから見てみれば、単なる「人事異動」でこれほどの抵抗に合うとは思わなかったようです。私に相談されたのは、この場合「異動手当」は出すのかどうかということでしたが、通勤費はどこに住んでいようが一律支給をしているし、移動先での確固とした地位を与えていれば特に支給する必要はないでしょうと申し上げました。
このように事業部別組織であると事業部内で優劣ができ始めると内部での軋轢が生じ、いざ異動という時にスムーズに事が運ばない可能性があります。その社員から見てみれば、他事業部は他の「会社」であり彼女にとっては関係ないのでしょう。これは機能別組織でも経理部門の社員が営業部門の人間が何をしているのか知らなかったりしているので、一概には事業別組織のみで起こり得る問題とは言えないでしょう。
組織の基本系はこの「機能別組織」と「事業部別組織」の二つとなりますが、実際は単純に機能別組織や事業部別組織もう少し発展して行く時には、この双方を合わせたり、一部を導入したり、この二つから発展させた組織を構成する場合が多いのです。
その他にも、筆者個人的にはカタカナの付く組織は嫌いなのですが、「グローバル組織」や「インターナショナル組織」、「マルチナショナル組織」など、多様化してきています。特に国と国とのボーダーが無くなって来ており、またIT技術の進歩により、組織はその都度「変化」・「進化」していく生き物のようです。ドラッガーは「正しい組織構造が成果を約束してくれるわけでない。しかし間違った組織構造は成果を生まず、最高の努力を無駄にする。」と言っているが時代に即した組織構造を構築することが高業績の前提条件です。次号も引き続き組織について述べていきましょう。
NNA 人「財」羅針盤 第69回(2010年6月10日)より抜粋


