【コラム】就業規則について 第三回
雇用法については誤解されている方が多く、我々も新規進出企業のお問い合わせに対して説明するのに苦労することがあります。それは雇用法の適用対象と適用対象外になるケースが同じ組織内に混在してしまうからです。例えば、月給3000Sドルの経理マネージャーと月給1900Sドルのセールス・コーディネーターを同時に採用する場合、前者は雇用法の適用対象外ですが後者は適用対象となるのです。後者は「原則」自由に労働条件を決定することができ、雇用法に従う「法的義務」はないが、通例は雇用法の中で定められている労働条件以上のプラス条件を織り込んでいます。
そもそも雇用契約とは「個別の労務供給契約」のことで、「従業員=被雇用者=Employee」とは、「使用者=雇用主=Employer」との間で「雇用契約=Service of Contract」を締結し、契約内容に基づき労務を供給する者を指します。もちろん雇用法の適用者の最大公約数は被雇用者であり、その中で適用対象・対象外が「区分け」されています。(表参照)
まず区分けの判断基準として明確化できるものに月給があります。2000Sドル以下のEmployeeと、メイドと船員を除く4500Sドル以下のWorkmanです。Employeeに関しては昨年までは1600Sドル以下だったのが、不景気の折、労働者を守る為に適用範囲を広げた形となりました。一般企業の事務職では現在給与が2000Sドル越える職種はあまりなく、この職種に関しては雇用法適用になるので要注意です。2007年の好況時のシンガポール全体の平均賃金は3600Sドルだったのでほとんど雇用法の適用外でありました。
4500ドル以上のWorkmanのイメージとしては、建設現場の従業員やタクシードライバーのほか、肉体労働者の監督を行う現場監督や油田開発の技術者など、ほかの人ができない職人職などがあります。
さて、本題の「就業規則を作るにあたって」に戻りますと、月給1900Sドルの社員と3000Sドルの社員がいても、雇用法で定める労働条件を提示し「雇用法を網羅」すれば違法にならず、従業員のベネフィットにもつながります。中には飲食業のように従業員全員が2000Sドル以下なので、雇用法の最低限の条件で労働契約を用意しているところもあるのが現状でありますが、「法令」の最低条件を理解した上で、「通例」「慣例」を踏まえ労使双方納得のいく就業規則を作るのが理想といえます。
労働条件に関しては、労使双方において書面或いは口頭で示し合意をするとなっています。実際、口頭のみはほとんどなく何らかの形で文書に残します。その文書が「雇用契約書」であり、その中に労働時間や基本給など基本的な条項を織り込み、最後に細かい部分はEmployee Handbook=就業規則に明記されているという条項が入っており、中身は適宜改定ができることから柔軟に経営環境の変化に対応できることになっています。
次回は就業規則の具体的な組み立てについて述べていきます。


