【コラム】就業規則について 第二回
あるお客様に呼ばれ、求人のご要望を頂いた時のことです。現地法人の社長さんでらいっしゃり、採用活動には駐在期間中の3年間全て参加されており、その時の求人もかなり力が入っていらっしゃいました。「こんな仕事をあのようにやってもらいたいのでその様な人物を探して欲しい」と人物像のヒアリングが終わった後で、待遇面の質問に入ったのですが、有給休暇の日数は?と聞くと、「『多分』10日」という回答で、保険については「『恐らく』年間500ドルまで会社負担」と仰っていました。
我々エージェントとしては、候補者の方には「多分」や「恐らく」とは伝えられません。実際面接の時は人事担当の方が出席し、細かい待遇面の説明があるとは思うのですが、この点は我々としては事前にクリアーにしておく必要がある為、社長へのヒアリングが終わった後に、担当の人事の方に聞くように心掛けています。
勿論仕事ありきですから、職務内容が合致していなければ採用には至りません。しかしながら、採用活動には全力を注がないと良い社員は採用できません。繰り返しになりますが、人事とは、まず「的確な採用活動」をおこなって適切な社員を獲得すること。獲物を取る動物は手を抜いてはいけないのです。
さて、具体的な就業規則を作るにあたって、シンガポールには労働法なるものが存在するのかということですが、答えはYESです。Employment Act(雇用法)がそれで、国内の雇用に関する諸条件、雇用者と被雇用者の権利と義務を定める国会制定法です。被雇用者の権利を守る法律であり、被雇用者が享受する「最低限の権利」を定めたものです。シンガポールの雇用法はタイやインドネシアの近隣諸国に比べると、どちらかというと雇用主に有利な法律でしたが、昨今の経済不況による失業率の増加で社会不安が増大したこともあり、2009年1月1日に大幅な改定が行われました。
よく新規進出企業からのご相談で、「雇用法に従って就業規則を作る必要があるのか?」との質問を受けます。答えは微妙ですがNOでもあり、YESでもあります。なぜなら、雇用法は全ての労働者を対象としたものではなく、適用対象となる従業員は「限定」されているからです。つまり雇用法の適用対象となる従業員と適用対象にならない従業員が存在するのです。適用となる場合、雇用法の遵守状況について、雇用調査官に検査権限が与えられており、違反に関してのチェックをし、違反が発覚した場合は罰金になる場合もあります。対象については後述しますが、まず雇用関係に雇用法の適用がある場合、雇用法に定められている項目の最適基準を下回ってはならず、法規の最適基準よりも従業員に不利な契約を結んだ場合、その不利な部分は違法・無効になります。
次に雇用関係に雇用法の適用がない場合、合意(契約)により条件を決定することが出来、原則「自由」です。つまり雇用法の定める労働基準に従う「法的義務」はありませんが、雇用法の基準以上の従業員に有利な条件は、労働者の福利厚生面アップの観点により政府からも推奨されています。企業にいるマネージャークラスの方がこのように雇用法を踏まえた上での原則自由な労働契約を結んでいます。
次回も引き続き就業規則について述べていきます。

